The True Story of Audion

シェアウェアのMac OS X用MP3プレイヤー Audionがフリーになったようです。恐らく、iTunesがこれだけ普及した今となってはシェウェアにしておいてもメリットが無いと踏んだのでしょう。サポートも無しのas-isな形で提供される「Retired apps」という扱いになっています。

さて、このAudionを開発していたのは二人の開発者が立ち上げたPanicというとても小さな会社なんですが(今は8人の従業員がいるようです)、他にもFTPクライアントのTransitをはじめとして小粒ながら使い勝手と見栄えにとても気を使ったソフトをリリースしています。同社のサイトにはオフィスの内装施工前と施工後を紹介したThe New Office!というページもあったりして、遊び心が感じられるとてもいいベンダーです。

で、そんなPanicですから今回もThe True Story of Audionという、Audion開発の舞台裏を明かした文書を公開して楽しませてくれます。Panic創業者の一人、Cabel Sasserさんが書いたこの文書では、1.0のリリースに合わせてSteve JobsにAudionを紹介するメールを送ったことや、ライバル製品(SoundJam)との攻防、AOL(Nullsoft)からの買収の持ちかけ(結局社風が変わってしまうことを嫌って断ったようです)、Appleからのミーティングのオファー(AOLと日程が被ったため断ったようです)、日本での販売代理店act2による大々的なプロモーションに感動したことなどが語られています。

特に興味深いのが、Audio 2.0リリースの際にSteve Jobsに送ったメールに返事があったことで(執念だな)、そのメールは以下の通り。

From ---@pixar.com Sun Dec 24 07:49:08 2000
Received: by NeXT.Mailer (1.148.2)
From: Steve Jobs <---@pixar.com>
Date: Sun, 24 Dec 2000 07:36:53 -0800
To: Cabel Sasser <cabel@panic.com>
Subject: RE: Audion 2: have you had a chance to see it yet?

Cabel,

AOLとの取引がお流れになったって聞いたよ。
Appleで我々と手を組むことに興味はないかい?

Best, Steve

Jobsのメールアドレスがpixar.comです!メーラはNeXT Mailerです!しかもクリスマスイブの朝に返事を書いています!Cabelさんは最初誰かのいたずらかと思ったらしいのですが、メーラがNeXT MailerだったということでJobs本人からだと信じたようです(当時Mac OS Xはまだ世に出ていません)。

で、Cabelさん喜びまくりです。

That’s Steve.. as in.. Jobs. Steve Jobs. Steven. P. Jobs. The guy.. who did the thing.. with the Apples and… in my INBOX.. Wozniak.. whoah.

Jobsのフルネーム出ました。つーかWozは関係ないじゃんか(笑)。で、共同経営者のSteve Frank氏とひととおり盛り上がる描写があって、その後の一文に感動しました。

It may sound a bit overdramatic, but for two guys making shareware, this was a big, big thing.

さて、首尾よく数週間後のMacWorld Expo 2001にてAppleとのミーティングを持つことになったPanicですが、なんとそのExpo会場にてiTunesがリリースされてしまいました。これにはCabelさんもだいぶショックを受けたようですが、気丈にも会場でJobsに話しかけます。

「やあスティーブ、Panicのキャベルです」
「おお、やあキャベル!会えて嬉しいよ。そうだ、教えてくれ。iTunesをどう思う?」
「グレートです。素晴らしい出来ですよ。でも、僕らもまだまだAudionで上手くやれると思ってますよ」
「ほんとに?それは興味深いな。僕はもう君たちにチャンスは無いと思うけど」

おーい!

Panicの二人は数日後のAppleとのミーティングにて、ライバルだったSoundJamがここ数週間の間に店頭から急速に姿を消していた理由を知り、さらに「Appleで働かないか?」というApple信者なら泣いて喜ぶオファーを受けたのです。

結局Panicの二人は「Panicをやるチャンスは今しかない。僕らには子供も居ないし、結婚もしていなければ大きな債務もない。これから先の人生でこんな機会は二度とないだろう」と考え、現在に至っているわけですが、こんなことを書かれるとなおさら応援したくなってしまいます。アメリカ人は盛り上げ上手だな。

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